手を使って、足を使って

家の前の桜のつぼみが一輪、二輪と開き始まったと思ったら、早朝にしばらく牡丹雪が舞ったという今日、春らしく髪を切ってもらおうと家を出た。
目指すは、私が子ども時代を過ごした街だ。
日差しはやわらかいけれど、風は冷たい。花冷えだな。

いつもの美容室の片隅には足踏みオルガンがある。
アンティーク好きの店主がヤフオクで入手したそうな。
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鍵盤ハーモニカは吹くことで音を出すわけだけど、この足踏みオルガンは両足のペダルを左右交互に踏み続けることの空気圧で音を出す。

数曲弾いてみたけれど、両足を踏み続けるために、まるで通販の健康器具ルームランナーのように、けっこう腹筋に応える、かなりの運動量である。
私の小学校時代は、どの教室にもこの足踏みオルガンというものがあったっけ。
それが次第に電気ピアノ、電子キーボードへと代わり、CDから流れるカラオケで子どもたちが歌を歌っているのを見た時には、ひどく哀しかった。

84歳になる私の父は自己流で器用にピアノを弾くのだが、小学校時代の放課後にこの足踏みオルガンを弾くのが楽しみで知らぬ間に弾けるようになっていたという。
昭和初期の子どもたちにとっては、この足踏みオルガンがあるというだけで、学校は貴重な文化に触れられる魅力的場所だったのだろう。

そういや、その父よりさらに年配だった小学校1年のときの担任の下田先生はいつも足踏みオルガンを弾きながらイタリア民謡とか歌っていたっけな。
その当時五十代半ばの男の先生だったけど、足踏みペダルをブカブカ軋ませて、いつも心をこめて弾き楽しそうに歌っていた。

生の楽器というのは、どんなものでもその人の息づかいや情が伝わる。
鍵盤を指で押さえればすぐ音が出るわけじゃなくて、こんなに足を動かして、踏みしめて、オルガン弾いていたんだなあ、と思うと感慨深い。


このところTEENSPOSTでは、春休み思春期キャンペーングッズを全国各地に送って、PRの協力をお願いしている。
思えば、立ち上げ期の頃には、スタッフ、ボランティアが一通一通せっせと自筆の手紙を書いて、年中、PRのお願いをしていた。

今回もたくさんのボランティアの手によって完成した4000セットの特製グッズに、時間が許すかぎり一筆添えさせてもらっているが、先週から年度末の事務が山積みの私に代わって、ピアサポーターのまきちゃんが手書きの手づくりカードを添えている。
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10代が求めているのに届かない情報は沢山ある。
でも、それはほとんど、届けようとしない大人の責任だ。

心を届けるには、手を使って、足も使って。
どうか、届いた先の皆さんがティーンの手に届けてくださいますように。
by teenspost | 2009-03-26 20:32 | ♪徒然Sawanism