こわい?さびしい?はずかしい?

JR町田駅のホームで電車を待っていたら、イチローの大きなポスターが目に飛び込んできた。
よーく見たら、ビール会社の宣伝広告だった。
折しも、新入歓迎会などで急性アルコール中毒が問題となる4月である。
欧米諸国では、若者や子どものヒーローやスーパースターがアルコール飲料のCMに出ることはないし、規制されている訳だけど、あのイチローはどう思っているのかな、とふと思った。

アルコール問題に寛容といわれるこの国で、アルコール依存症について当たり前に語るのは、すごく大変だ。
なんやかんやと誤解と偏見と圧力がまとわりつく。
そもそも、そういうのって、寛容と言うのだろうか。

この世には、お酒を適切に飲むことができずに自分自身や周囲を傷つけてしまう依存症という病がある。
日本では飲酒者の26人に1人といわれ、増加している。
ある学校の新歓コンパや同窓会を開けば、ひとクラスに1人か2人はいる、という勘定になる。
だからこそ、日本の酒造会社も社会的責任として、売るだけじゃなくて、アルコール問題の啓発に取り組みはじめている。

そんな中で、アルコール問題を持つ家族や友人について、似たようなフレーズを繰り返し耳にしてきた。

★うちの父はお酒が好きですが、飲むと性格がちょっと変わるくらいでしょうか
★祖父は依存症というほどでもないけれど、飲めば暴れ(or 心を閉じ)ます
★母がお酒を飲むのは、家族の問題で心を痛めてストレスが多いからだと思う
★静かに飲むだけなら誰にも迷惑かからないし、ただの説教好きは、アル中ではないでしょう
★だけど、あの人は仕事もまじめな、いい人なんですよ!

こんなにも本人の資質や意思の力や性格の問題として混同される病もないだろう。
とくに最後の「飲まなければ真面目ないい人」というのはもれなく付いてくるフレーズだ。

私はかつて「アレルギー性鼻炎」とか「花粉症」という言葉がない時代からその症状に苦しんでいたことがあって、「なぜ、私だけ春になると治らず長引く鼻風邪に苦しむのだろう」と思っていたことがある。
「花粉症」という言葉を得てからは、そう思い煩うことはなくなったし、対処もわかったし、最近ではこんなに沢山の人が同じ症状を持っていることに驚くこともなくなったほどだ。
だけど、「なんであの人は真面目ないい人なのに鼻水とくしゃみばかりするんだろう」と云われたらつらいだろうな。

その話を先日、あるギャンブル依存症回復者にしたら、その人も「そうなんです。なんで私は適度にギャンブルができずにひどい目に遭うダメな奴だろうと思っていました。それが病気だと知る前までは」と言った。

日本にアルコール依存症の回復プログラムを広めたミニー神父は自分自身もアルコール依存症の回復者だったが、「依存症の涙と言葉は信じるな」という名言を残している。
依存症とは感じるべき感情を感じなくなる「感情の病」であり、認めることなく、無自覚にウソをついたり、理由を並べたりする「否認」こそがその主な症状だ。

それが「病」のもたらす「症状」なのだとわかれば、性格や本人の資質の問題としてはとらえなくなるだろう。
さらに、それはそのままだと進行するけれど、回復が可能であることがわかれば、周囲はどれほど救われるだろう。
いやいや、誰よりも本人が救われるだろうに。

f0107724_2351326.jpg携帯サイトのクロちゃんシアターは、
こわいと感じないでいたら、こわい犬になり、
さびしいと感じないでいたら、さびしい犬になり、
はずかしいと感じないでいたら、はずかしい犬になってしまったクロちゃんが登場する。

アルコール問題を持つ人とそのまわりでは、感情の病の症状として「こわくて、さびしくて、はずかしいこと」が年中起きている。
傷と恥が深いほどに、本人も周囲も包み隠し、表面的イメージとのギャップは深まるばかりだけれど、それが表面化したときには、それが今回だけのことではないことを一番知っているのは本人なはずだ。
だからこそ回復へ向かうチャンスでもある。

エリック・クラプトンやらベティ・フォード(米国元大統領夫人)やら、アルコール依存症に苦しみ、そこから回復し、カミングアウトし、アルコール依存症の予防啓発のために社会貢献しているスターや政財界の著名人はたくさんいる。。。そんな日本になることは、地デジの普及より重要だと思う。

今年はまたティーン向けの暴力予防プログラムとリンクさせてアルコール問題啓発プログラムもやっていきたいなあ、と思う。
携帯サイトアルコーリズム保健所はこちら
by teenspost | 2009-04-25 00:11 | ♪徒然Sawanism