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福井県に飛んだファジーとドラマチック応援団

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福井県立三国高校へ非暴力プログラムを出前する旅に出た。
一年前にリクエストくださった養護教諭のK先生は、2004年夏に新大阪で開かれた養護教諭のための全国研修会で、「養護教諭のための心の手当て」というテーマで話した私の講演を聴いてくれたのが最初のご縁。
そこで披露させてもらった「ファジーのきもち」に甚く心動かされ、地元に戻るやその直前に福井を襲った豪雨災害によって心傷ついた子どもたちの元へ「ファジーのきもち」を紙芝居にして読み聴かせのボランティア活動をされたという。

その後、K先生はこの春退職されのだが、4月から引き継いだS先生も、なんと福井水害の折りに一緒に「ファジーのきもち」を子どもたちに届けた一人だという。
校内でたった一人しかいない養護教諭は、多くの生徒の心と身体の健康を守るという大変な日常であるにもかかわらず、ただただ頭が下がる。

福井県に飛んだファジーとドラマチック応援団_f0107724_942274.jpg6年も前に蒔いた種が、こうして、たくさんの人の心から心へと伝わり、手から手へとつながっていったことは、この仕事をしてきた者として心が踊るような喜びだ。

そんな経緯もあり、今回、三国高校では700名の生徒さんたちに、心を込めて「ファジーのきもち」を読ませてもらった。

旧制高校から続くこの伝統校は、私自身の高校時代を彷彿とさせる自由な雰囲気が漂い、信頼感あふれるゆるい空気の中で、自然体の生徒の表情が印象的だった。
その場でいきなりお願いしたロールプレイに演劇部の男子生徒が快く立ち上がり、名演技をしてくれた。
終わりの挨拶をしてくれた保健委員長はプログラムの間中はパソコンの操作を手伝ってくれ、終わりには壇上に昇りつつも、マイクは通さず、私の遥か頭上から優しい笑顔で、心の言葉を聴かせてくれた。

三国高校は広大な田園地帯と透き通る美しい北陸の海と湯質豊富な芦原温泉に恵まれ、生徒の家族は農業や漁業を営む家も多いとか。
自然と共存する環境は、生徒の心の成長や表現力にも大きく寄与していることだろう。

終了後、S先生は今回初めての福井訪問となる私を、学校から車で10分ほどの景勝地「東尋坊」へと案内してくれた。
行ったことはなくても誰もが一度はTVで目にしている「東尋坊」。
メディアがつくるドラマの影響もあって、「自殺の名所」なんて呼ばれ方もしている。
本来はゆたかな自然の中で高齢者が多く暮らし、子どもの夜間緊急相談システムの取り組みで日本一の福祉県福井だが、北部の景勝地が「自殺の名所」、南部の美しい若狭湾が「原発銀座」と呼ばれる現実は地元の問題ではない。
「東尋坊」では自殺を予防するNPO活動も盛んで、「ドリャーおじさん」という目の前で断崖からダイビングして死なないことを証明して這い上がってくる果敢な名物ボランティアもいるらしい。

そういえば、今日は世界自殺予防デー、WHOの自殺予防週間がはじまった。
三国高校では「自分に向ける暴力」の話と、その本質的予防のための心の健康と人間関係づくりを中心にお話しさせてもらった。

夕暮れ間近か、東尋坊からサンセットビーチに移動し、S先生と海を見ながら、おしゃべりした。
S先生は穏やかな語り口で、しかるべきときにはきっちり境界線を引いて適度な距離を作れる方とお見受けした。
「この仕事を続けて行くために自分に誓った3つのことがあるんです。1. ケガした生徒がいたらすぐにグラウンドに走って行けること 2.修学旅行に引率できること 3. 生徒を可愛いと思えること…これができなくなった時は私は仕事を辞める」と言った。
そう、そう、ケアする仕事とは、心と身体と、そして情が資源なのよん。

夕陽が沈む時を待つ浜辺には、なぜかD大学とR大学の応援団が太鼓の音と大合唱を響かせている。
ここは大学生の合宿の名所でもあるらしい。
浜辺の右端と左端で練習していた2校だが、「実はお互い大学同士すごく仲が良いんですよ」とさっきまで硬派の伝統的応援練習を展開していたD大のOBがニコニコしながら話してくれた。
R大学の方は、ブラスバンドも加わり、女子部員が半数以上の男女共同参画型(?)ステージのようである。

夕陽をバックに肩を組みサークルを描いて歌う応援団に「ボーイズ&ガールズ トゥゲザー事業」を応援してもらったような気分。
うん、こういうドラマならいいね。さんきゅっ!
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by teenspost | 2010-09-10 21:42 | ♪渡り鳥の旅みやげ