奇跡などない

先週、公開中の映画フリーダム・ライターズを観た。
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米国西海岸で人種差別問題をきっかけにロス暴動が起きた1992年は、ティーンズポスト開設の年であるが、この物語はその2年後、1994年のカリフォルニア州ロングビーチの高校に着任したヒラリー・スワンク演じる新人教師エリン・グルーウェルと203教室の生徒たちとの実話を元にしている。

人種差別、貧困、暴力、薬物依存、家族問題…命がけの日常を送る14・15歳の生徒たちは、なにひとつ希望の持てない不安と恐れから、徒党を組み、憎しみに憎しみを返すことで自分を守ろうとし荒廃していく。
この現実を前に、諦めるだけで変化への希望を失った大人たちは、触らぬ神に祟りなしで向き合うことを回避していく。

だが、この新人教師は、銃と暴力の代わりに、差別と暴力という負の歴史に目を向け、「書く」という自由への闘い方を生徒に手渡し、そこから生徒たちは自分自身と世界を解き放っていく。

映画の中ではSPAワークショップでも使う米国の非暴力プログラムのアクティビティを行う授業場面も出てくる。
キング牧師の言葉をサンプリングした主題歌「A Dream」をはじめとするヒップポップや、生徒たちの書いた言葉でストーリーは綴られていく。

社会背景は異なっても、時代的にはティーンズポストがレターカウンセリングをはじめた時期と重なるため、私の中では一つひとつのシーンが深層の記憶とシンクロしていった。

実在するエリン先生(写真下 左端)は現在、「フリーダム・ライターズ基金」というNP0を運営し、教師のための教育プログラムやドロップアウトするティーンズの支援活動をしているのだが、「家族で学んだルールに対抗することを教えることが最も難しい」と語っている。

確かに、知らぬ間に家族で身に付けたルールに縛られていることを自覚することも難しければ、それに対抗できる考え方やコミュニケーションを学ぶことはとても難しい。

しかし、エリン先生はその難しいことに「書く」という表現を用いて挑んだ結果、
「生徒自身が学びとったことを家族に持ち帰り、親を再教育しはじめたのだ」という。
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世界中には、子どもという被抑圧者の立場に徹底的につき、子どもと向き合う関係性をつくり、子どもと学びあっている大人がまだまだたくさんいる。

そういう大人たちは決して結果を求めて安易な方法やお手軽なスキルを探したりはしない。

ただ、ただ、共に苦悩し,共に怒り、共に喜び、ともに歩むとき、思ってもいないことが起きるのだ。
それを人が「奇跡」と呼ぶだけだ。

Don't quit five minutes before the miracle happens.
The miracle will be repeated, one day at a time.
奇跡が起こるまで、五分でも放棄するな。
奇跡は、今日一日だけ、繰り返されるだろう。
(無名のアルコール依存症回復者の言葉より)

by teenspost | 2007-07-31 10:00 | ♪徒然Sawanism