2007年 09月 10日
この素晴らしき世界
その後、台風は函館に上陸し、一晩吹き荒れて、翌8日にはオホーツク海へと抜けたらしい。
台風の影響が心配された北海道伊達赤十字病院でのワークショップ第一日目。
会場となった病院最上階からは、どんより垂れ込めた台風雲の隙間に晴れ間が見えてきた。
毎年恒例となったワークショップには、精神科医、看護師、保健師、心理士、福祉士、養護教諭…さまざまな人が集まる。
今回は依存症に関わる援助職に欠かせない「怒りの対処とセルフケア」をテーマにした非暴力SPAプログラムだ。
まずは安全な場所をイメージするドラマづくりからはじまり、怒りが機能的に表現される時と、機能不全に陥る時のそれぞれをロールプレイで体感する。
午後からは、それぞれの怒りをオブジェとして造形し、遊びながら紐解いていく。
あっというまに、夕方。
夕焼けの向こうに、晴れ渡る2日目が見えてきた。
2日目は清流沿いの野山を散策。
たわわに実るナナカマドが、青空を背景にオレンジ色に輝いている。
ふだんストレスフルな現場で頑張っている人たちも、自然の中で五感と第六感を携えれば、「ただの私」に戻って、安全な居場所を見いだしていく。
そこで見つけた「自分の強み」「味方」「希望」「夢」「信頼」を持ち帰り、怒りのオブジェとともに再構成し、それぞれの物語を分かち合う。
さらに、仲間のオブジェと合わせて作品を創り,会場はギャラリーとなった。
昼食後は「Let it be」を歌い、「シアター伊達名画座」のはじまりはじまり。
個々の心に残る映画をモチーフに、情緒豊かに花開き表現された4つの創作劇が生まれ、さらに仲間をエンパワメントするオムニバスとしてつながった。
それぞれの違いがなんら不都合ではなく、分かち合い,支えあい、創造的につながりあう世界。
他人がいるからこそ、実現するゆたかな世界。
そこでは、だれもが暴力から自由になれる。
それは、夢でも幻想でもない。現実のもの。
帰り道、駅まで送ってくれた精神科医長Tさんの車の中で「*What a wonderful world(「この素晴らしき世界」)」が静かに流れていた。
札幌行きの特急に乗り込むと、伊達の仲間たちがいつまでもいつまでも手を振って見送ってくれた。
(病院から望む伊達の海の遥か向こうは函館。駒ヶ岳のシルエットが映る)
*What a wonderful world(「この素晴らしき世界)」
ジャズシンガーのルイ・アームストロングが戦場に向かう兵士に歌ったといわれる
緑の木立を愛でる、赤いバラの花も
あなたと私のために 花開き実るのだ
私は自分で思うんだ
世界はなんて素晴らしい
青い空を眺め、白い雲も
明るい恵みの日も
暗い聖夜も
私は自分で思うんだ
世界はなんて素晴らしい
空に架かる虹の色は
なんて美しいのだろう
出会う人たちの表情も
はじめまして、と握手する友だちは
愛しているよと言っているんだよ
赤ちゃんの泣き声を聴く
育ちゆく子どもの姿を見守る
子どもたちは沢山のことを学ぶ
私が知っている以上のことを
私は自分で思うんだ
世界はなんて素晴らしい
by teenspost
| 2007-09-10 21:19
| ♪渡り鳥の旅みやげ