アイルランドからビルマへと

f0107724_81059.jpg夕方から、アイルランド音楽を聴きに,藤沢リラホールへ出かけた。
スタジオ悠でも素晴らしい演奏を聴かせてくれる守安功さん&雅子さんと、今朝成田に着いたばかりというアイルランドの笛の名手ショーン・ライアンさんと愛娘キアラさんのコラボレーションだ。

なんでもライアン一家は、廃墟同然の古城を購入し、リフォームして住んでいて、そこは、アイルランドで最も幽霊が出ることで有名だとか。
その住人にふさわしい風貌の(?)ショーンさんの笛の音に合わせて、妖精のような16歳の娘キアラさんが目を見張るステップで踊る。
このキアラさんはダンスだけじゃなくて、楽器も万能らしく、途中、父親と笛を吹き始めた。

f0107724_23343854.jpg守安さんはいつも丁寧に曲の紹介をしてくれるのだけど、なんの解説もなく曲がはじまったとたん、うまく言葉にできない感情で胸がざわざわしてきた。

ふと気がつくと、脳裏にミャンマー(ビルマ)の子どもたちの姿がスライドショーのように流れていった。
不思議な感覚に、呆然としていると、曲が終って、守安さんが一気に語り始めた。

いまの曲は、19世紀のアイルランドで「じゃがいも飢饉」と呼ばれた大飢饉によって大勢の人々が餓死し、それでも当時のイギリス帝国の支配者たちは毎晩大晩餐会をしていた、そこで雇われたアイルランドの演奏家たちは生きるためにメヌエットを奏でていた、その当時の様子を思い起しつつ、現代の若手のハープ奏者が創った曲です…とのこと。

16歳のアイルランドの少女とその父が奏でる曲を聴きながら、私の脳裏には、ミャンマーの山奥で小さな弟をオンブしていた少年や、いま緊張状態の続くヤンゴンの街角で葉巻売りのお父さんの膝に座っていた男の子や、孤児院の少年少女たちや、シュエダゴン・パゴダ周辺の早朝の屋台で働いていた16歳の少年や、そう、2004年の光景が思い浮かんだ。

今年の8月中旬、軍政府が突然ガソリン価格を最高9倍に値上げしたこと市民の怒りが吹き出し、僧侶を中心に大規模なデモが発生し、民主化の動きが出てきたところで、予想通り、強硬な弾圧がはじまったミャンマー。
ガソリンを使う乗り物の所有は僧侶や公務員に限られているというから、さらに貧困層は怒りさえ奪われている。

f0107724_23325512.jpgこのところ日々刻々緊迫する状況が報道され、昨日は日本人カメラマンが死亡し、事務局には知り合いの台湾人女性がミャンマー情勢を憂いて12カ国語の署名キャンペーンをメールで届けてきたりもしていた。

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さて、守安さんたちのコンサートは、現代の曲と古い曲が時代を行ったり来たりしながら、すすんでいった。

帰り道に思った。
ショーン・ライアンさんは、お化け屋敷に住んでいるというわけじゃなくて、たぶん、死者の声に耳を澄ませて暮らしているのだろう。
そして、守安さんたちも、アイルランドの伝統音楽を通じて、いまは亡き人たちの感情を自らの肉体で伝えている人たちなんだろう。

すごく遠くにあるようでも、近くに感じることはできるのだ。

守安さんの最新作CDは18世紀の盲目のハープ弾きオキャロランの作品集、タイトルは「Separation of soul and body(魂と肉体の別れ)」だ。
この秋、守安夫妻とライアン父娘は、北は仙台,南は鹿児島まで、全国各地を旅する。

詳しいライブ情報、守安さんHPはこちら
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by teenspost | 2007-09-28 23:52 | ♪徒然Sawanism