今日、手を放す

非暴力プログラムの指導書を本日無事入稿した。
原著者のポールさんはもうじき来日。
11/25-26の横浜での支援者研修を皮切りに、
11/1はゲイコミュニティで、
11/2-3は沖縄首里でのワークショップが待っている。
お問合せ・申込みは講座申込みフォームより
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/////「あとがき」より//////
この原書に初めて出会ったのは、2003年の秋、場所は米国ミネソタ州にある依存症回復施設「ヘイゼルデン」であった。
その前年にも、WAM(独立行政法人福祉医療機構)助成「アルコール家族の子どもケアプログラム事業」の一環として、同施設にてスタッフ研修をしているのだが、その翌年、さらに子どもの暴力問題の本質的解決に向けて新たな道を探すべく再訪したその帰り際に、一人のアフリカ系思春期カウンセラー、デリックさんから「これはいい本だよ」と勧められたのがこの「Making the Peace」だった。

デリックさんは薬物依存症の回復者カウンセラーで、全米の高校をまわって高校生たちに依存症の予防啓発プログラムを行っているのだが、ダンスを踊りながら、からだ全体で歌うように語りかける熱いレクチャーは、10代のハートに届く情感あふれるパフォーマンスだった。
そんな明るく元気一杯なデリックさんだが、自分自身の10代の絶望と孤独の日々を語るときだけは、声のトーンが深い哀しみで満ちあふれ、しかも、決してそれを忘れはしないという信念を貫くかのように、包み隠そうとはしなかった。

帰国した私は、トランクからその本を取り出し、夢中で読みはじめた。その本は、リアルな現実に向き合うことで暴力の本質を明らかにし、深い哀しみと絶望から信頼と希望を生みだし、非暴力という勇気を与えてくれる画期的な内容だった。
また、本書「イントロダクション」にも示されている若者と大人の新しい関係づくりは、TEENSPOSTのミッションとしっかり重なり合うものであった。

これは、ぜったいに、日本の若者たちが待っている情報だ、と確信した私は、少しずつ翻訳するそばから、高校生、大学生、暴力予防支援者の研修に取り入れ、確かな手応えを得ていった。

2006年度、WAM助成「子どもと大人のための非暴力プログラム啓発事業」で、東南アジア、米国、各地のNPOの実践を視察するチャンスを得た私は、米国サンフランシスコ郊外の著者ポール・キベルさんの自宅で、日本の医療・福祉・教育関係者七名で研修を受けることとなった。

紫紺野牡丹が咲きこぼれる築百年の自宅でのワークショップでは、自然体であたたくて居心地のよいリビングに通され、アジア系とアフリカ系の二人の女性のサポートが加わり、ポール・キベルさんは、ワークショップの合間にもキッチンのオーブンで香ばしいブルーベリーマフィンを焼いて私たちにふるまってくれた。「最近、一番下の子どもが家を離れて、近くには孫が住んでいるんだ」と語る、書いていることと言っていることとやっていることが一致しているピアスの似合う男性だった。

その模様は、報告書「非暴力のつながりをつくる(TEENSPOST=刊)」に詳しいが、その事業は沢山の方の協力を得て実を結び、2008年の春には、WAMより「アルコール家族の子どもケアプログラム事業」に続き二度目の「優良事業」として選出され、さらに、今回の「ティーンのための非暴力ピアプログラム事業」への支援も決定し、それはまるで開設から17年目の春に特定非営利活動法人となったばかりのTEENSPOSTに、バースデープレゼントが届いたような嬉しさだった。

そんな足掛け6年の歳月を経て、この春から、日本版の制作がはじまった。
・・・・(中略)・・・・

英語を日本語にするという作業をこえて、それぞれの文化の違いとその本質にある共通点をあぶりだしながら、すぐに日本で実践できる言葉を編むという作業は、予想以上に時間と根気のいるものであり、今こうして入稿に向かう瞬間も、まだまだ手元に置きたい思いもあるが、いったんここで手を放し、これを全国各地の協力者・支援者、そして、次代を創る若い人たちへお預けしようと思う。
そうして、これからは、みなさんとこの本を読み解き、実践し、分ち合っていきたい。

この本を携えて、また新しい旅がはじまる。

2008年 神無月     八巻 香織
by teenspost | 2008-10-15 23:58 | ♪徒然Sawanism